そして始まった、“親父と息子の男旅”
さてさて――。
ここまで延々と、18歳の頃の放浪旅について語ってきましたが、ようやく本題です。
我が家の家訓、
「息子が10歳になったら、親父と二人で“男の旅”に出る」
その記念すべき第一回。
長男・クルムとの旅が始まりました。
羽田経由で札幌へ。
ところで、よく聞かれるんです。
「クルムって、珍しい名前ですね?」
はい、珍しいです(笑)
実は――
クルム=包む
なんです。
妻が「くるむ」という言葉の響きが好きで、
女の子なら「くるむ」
男の子なら「クルム」
と決めていたそうです。
「人を包み込めるような、おおらかな人になってほしい」
そんな願いを込めた名前でした。
…まあ、当時10歳のクルム本人は、そんな壮大な意味よりも、「北海道で何食べられるの?」くらいだったと思いますが。
札幌からまず向かったのは、平取町二風谷のアイヌ部落。
そう、18歳の放浪旅でお世話になった、あの場所です。
実に27年ぶり。
「覚えてくれてるかなぁ…」
なんて少し緊張しながら訪ねると、康ちゃんは昔と変わらず、
「あぁ、来たか!」
くらいのテンションで迎えてくれました。
しかも相変わらず、いろんな人が居候している。
時代が変わっても、“康ちゃんワールド”は健在でした。
その日は、アイヌの伝統的なテント「クシャ」で宿泊。
三角形のテントで、雰囲気は完全にインディアンのティピー。
10歳のクルムには、もはや秘密基地です。

親父は感慨深い。
息子は冒険気分。
同じ景色でも、見えている世界は全然違います。
その後は、18歳当時の旅ルートをなぞるように帯広へ。
…が。
ここで重大な問題に気づきます。
親父は楽しい。
でも息子は、
「知らないおじさん達に会わされ続けているだけ」
なのです。
これはいかん。
完全に親父の自己満足旅になっている。
そこで急遽、“少年サービス”を導入。
そう、北海道と言えば――
スキー!
帯広から少し戻った新得町で、「つっちゃんと優子の牧場のへや」という農家民泊へ。
迎えてくれたのは、スローライフ界の先駆者・湯浅優子さん。
今でこそ“グリーンツーリズム”なんて言葉をよく聞きますが、当時はかなり先進的でした。

優子さんにスキー場まで送迎してもらい、親子でスキー体験。
こういう“遊び”がないと、10歳男子は持ちません。
しかし、この旅には、後に語り継がれる事件が起きます。
スキー場で――
クルム、お漏らし。
しかも、小ではない。
大である。
これは一大事。
もちろん普段そんなことはありません。
でも今思えば、無理もなかったのでしょう。
初めての長期旅行。
親父と二人きり。
知らない土地。
知らない人たち。
「もし親父とはぐれたらどうしよう」
10歳なりに、ずっと緊張していたんだと思います。
あの時は、何事もなかったように処理しましたが、きっとクルムの中では大事件だったはずです。
ちなみにこの件、25年間ずっと妻には秘密でした。
…そろそろ時効でしょう。
クルム、許せ。
でも、この“男旅”のおかげで、長男との距離は一気に縮まった気がします。
男同士でしか作れない時間って、やっぱりあるんですね。
そして時は流れ――
今度は次男・シンラが10歳に。
さて。
次は、どこへ旅立つのか?
ここから、いよいよ本題。
「ルーツを訪ねて」の旅が始まります。


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