そもそも、何故竹細工をしているのか?(その29)~コロナ禍、工房存続宣言。そして“出張職人”卒業へ~

そもそも、何故竹細工をしているのか?シリーズ

~コロナ禍、工房存続宣言。そして“出張職人”卒業へ~

あの頃は、本当に世界中が不安の中にいました。

「この先、世の中どうなるんだろう…」

そんな空気が、世界全体を覆っていましたよね。

もちろん、山奥の竹工房も例外ではありません。

2020年4月。
工房の弟子たち、事務スタッフ、全員を集めました。

重たい空気の中、私はこう話しました。

「これから一年間は、貯金を崩してでも、全員が仕事できるようにする。だから安心して働いてください。
でも、もし次の年もこの状態が続いたら…その時は工房自体が無くなるかもしれない。」

弟子たちにとっては、かなり腹を括った宣言に聞こえたようです。

実際、コロナで状況は激変。

メインだったデパート催事は全滅。
ギャラリー個展も縮小。

売上はガクンと落ちました。

ただ、初年度は国や自治体の給付金に本当に助けられました。

でも、ここからが面白い。

実はコロナ前から、私は少しずつ「デパート催事中心の働き方」を見直そうとしていたのです。

年間15回も催事に出ていた頃は、人生の3分の1が出張。

  • ホテル暮らし
  • 毎日外食
  • 夜は飲み会
  • 移動、移動、また移動

若い頃は楽しかったんですが、だんだん体が「もう勘弁してくれ」と言い始めます(笑)。

しかも、デパート業界そのものも変化していました。

昔は“百貨店に行けば人がいる”時代でしたが、時代はネットへ。

売上も、1991年のピークから半減以下。

「これは、そろそろ次の形を考えないといけないな」

そんな時に来たのがコロナショックでした。

結果的に、ほとんどのデパート催事から撤退。

ただし、完全撤退はしませんでした。

2か所だけ残したのです。

なぜか?

お客様の“生の声”を聞き続けるため。

作り手だけの世界に閉じこもると、「自分では最高!」と思っても、世間とはズレていくことがあります。

そこは、ずっと大事にしてきた部分でした。

そして不思議なことに――

催事を減らしたことで、逆に工房が元気になっていったのです。

今までは、私が出張続きで、

「新規の話が来ても対応できない」

なんてことも多かった。

でも工房にいる時間が増えたことで、

  • 新しい作品開発
  • 新規取引先対応
  • 大口案件
  • 弟子たちとの制作

全部に向き合えるようになりました。

しかも、催事にかかっていた莫大な経費も消えた。

ホテル代、交通費、送料、人件費…。

売上だけ見れば減っても、出費も同じくらい減るわけです。

結果として、経営はむしろ安定。

まさに、

「ピンチの後にチャンスあり」

でした。

コロナは大変でした。

でも、あの強制リセットが無ければ、私はずっと“出張する竹職人”のままだったかもしれません。

今はようやく、腰を据えて、じっくり竹と向き合える毎日です。

いよいよ、このシリーズも明日で終了です。 涙 

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