珍しいお客様が、竹の相談にやって来た
先日、我が家にちょっと珍しいお客様がやってきました。
日田市で木工をされている矢羽田さんです。
木工職人さんなので、普段は木と格闘しているわけですが、この日はどうやら竹に用事があるらしい。
「日田祇園祭で使う竹の飾りについて、教えてもらえませんか?」
というご相談でした。
「竹のことなら任せてください!」
……と、ちょっとだけ胸を張ってお迎えしました(笑)。
日田祇園祭に登場する「パイパイ」
ご存じの方も多いと思いますが、日田祇園祭は大分県日田市で毎年7月20日過ぎの土日に開催される、約300年の歴史を持つお祭りです。
絢爛豪華な9基の山鉾が、祇園囃子を響かせながら町を巡行します。
そして夜になると、山鉾に提灯が灯る「晩山」。
昼間とはまた違った幻想的な雰囲気になります。
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この日田祇園祭で、山鉾の側面に取り付けられるのが、今回の主役である竹の飾りです。
これ、なかなか面白い役割を持っています。
山鉾が町を巡行すると、民家の屋根などに触れることがあります。
その竹飾りには厄除けの意味合いもあるそうで、祭りが終わると今度は各家庭の玄関に飾られ、家の厄除けをしてくれるのだとか。

そして、この飾りの名前が……
「パイパイ」
なんとも可愛らしい名前です。
竹の飾りにしては、ずいぶん親しみやすい名前ですね(笑)。
ところが「パイパイ」がピンチ!
ところが、このパイパイ。
毎年なんと約3,000本も作るそうです。
3000本ですよ。
「ちょっと多めに作ります」なんていうレベルではありません。
ところが、ここにも時代の波が押し寄せています。
パイパイを作ってきた職人さんたちの高齢化が進み、これまでのように作ることが難しくなってきたのです。
これは困った。
日田祇園祭は、約300年続く伝統行事。
しかもユネスコ無形文化遺産にも登録されています。
そんな大切な祭りの一部が、
「作る人がいなくなったので、今年からありません」
では、あまりにも寂しい。
そこで白羽の矢が立ったのが、木工職人の矢羽田さん。
……ただし、
木工職人です。
竹職人ではありません(笑)。
そこで、
「竹のことなら、あの人に聞いてみよう」
ということで、私のところへやって来られたわけです。
まずは「現物を見せてください」
実物を見せてもらいました。
幅は約3センチ。
長さは約1メートル40センチ。
そして竹を薄く剥いで、最終的に**6割(むつわり)**にしたものです。
見た目はシンプル。
しかし、竹細工というものは、
「見た目が簡単なものほど、作るのが難しい」
という、ちょっと意地悪なところがあります(笑)。
「これを作るには、どんな道具が必要ですか?」
「どんな手順で作ればいいですか?」
というのが今回の相談です。
まず、道具より大事なのが「竹」
竹細工というと、すぐに
「どんな道具を使うの?」
という話になりがちですが、その前に大事なことがあります。
それは……
どんな竹を使うか。
これが非常に重要です。
いくら腕のいい職人さんでも、材料が見当違いでは、なかなかうまくいきません。
今回使うのは真竹。
そして、
- ある程度の太さがあること
- 切ってから、あまり日にちが経っていない生竹であること
- 秋から冬にかけて伐った竹であること
など、いくつか条件があります。
竹は竹でも、何でもいいわけではない。
「竹なら何でも一緒でしょ?」
なんて言ったら、竹職人に怒られます(笑)。
いよいよ、竹を割る
条件に合った竹が用意できたら、まず必要な長さに切ります。
その丸竹を、幅3センチくらいになるように割っていきます。
ここで登場する秘密兵器が、
「菊割り」
という道具。
これを使えば、丸竹を一気に、しかも比較的簡単に割ることができます。
竹を前にすると、昔の職人さんたちは本当にいろいろな道具を考えたものだと感心します。
3割からの「6割」がポイント
問題は、その後です。
方法はいくつかあります。
最初に3センチほどに割った竹をある程度剥いで、それから6割にする方法。
もう一つは、先に3割にして、その状態で剥ぎ、さらに剥いだ部分を二つ割りにして、最終的に6割に持っていく方法です。
実際にやってみると……
最初の方法。
これ、難しい!
かなりの熟練者でないと、きれいに剥ぐことができません。
竹というのは、こちらの思い通りにはなかなか動いてくれません。
「そこじゃない!」
「そっちに割れないで!」
と、竹と無言の会話をすることになります(笑)。
そこで、私は後者の方法を実演して見せました。
3割にしてから剥ぎ、その後に二つ割り。
この方法のほうが作業しやすく、矢羽田さんにもこちらをお勧めしました。
木工の職人さんですから、きっと器用に仕上げてくれることでしょう。
300年の伝統を、次の世代へ
今回、矢羽田さんから相談を受けて、改めて感じたことがあります。
伝統というものは、ただ昔から続いているだけではありません。
「それを作る人」がいて、初めて続いていくものです。
300年続いてきた日田祇園祭も、誰かが山鉾を作り、誰かが祭りを支え、誰かが竹を割り、誰かがパイパイを作ってきた。
その一つひとつの技術が、次の人へ受け継がれてきたからこそ、今があります。
今回、木工職人の矢羽田さんが竹の仕事に挑戦する。
そして私が、少しばかり竹の知恵をお裾分けする。
こうして技術がバトンタッチされていくのも、伝統を守る一つの形なのかもしれません。
毎年3,000本。
気が遠くなるような数ですが(笑)、ぜひ頑張っていただきたい。
「パイパイがないと、日田祇園の夏が始まらない!」
そんな日が、これからもずっと続いていくことを願っています。
矢羽田さん、木工職人から竹職人への華麗なる二刀流!
ぜひ、頑張ってください。
そして、日田の300年の伝統を、次の300年へ。
竹は割れても、伝統は割らない。
……なんて、ちょっとカッコいいことを言ってみました(笑)。


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