~コロナ禍、工房存続宣言。そして“出張職人”卒業へ~
あの頃は、本当に世界中が不安の中にいました。
「この先、世の中どうなるんだろう…」
そんな空気が、世界全体を覆っていましたよね。
もちろん、山奥の竹工房も例外ではありません。
2020年4月。
工房の弟子たち、事務スタッフ、全員を集めました。
重たい空気の中、私はこう話しました。
「これから一年間は、貯金を崩してでも、全員が仕事できるようにする。だから安心して働いてください。
でも、もし次の年もこの状態が続いたら…その時は工房自体が無くなるかもしれない。」
弟子たちにとっては、かなり腹を括った宣言に聞こえたようです。
実際、コロナで状況は激変。
メインだったデパート催事は全滅。
ギャラリー個展も縮小。
売上はガクンと落ちました。
ただ、初年度は国や自治体の給付金に本当に助けられました。
でも、ここからが面白い。
実はコロナ前から、私は少しずつ「デパート催事中心の働き方」を見直そうとしていたのです。
年間15回も催事に出ていた頃は、人生の3分の1が出張。
- ホテル暮らし
- 毎日外食
- 夜は飲み会
- 移動、移動、また移動
若い頃は楽しかったんですが、だんだん体が「もう勘弁してくれ」と言い始めます(笑)。
しかも、デパート業界そのものも変化していました。
昔は“百貨店に行けば人がいる”時代でしたが、時代はネットへ。
売上も、1991年のピークから半減以下。
「これは、そろそろ次の形を考えないといけないな」
そんな時に来たのがコロナショックでした。
結果的に、ほとんどのデパート催事から撤退。
ただし、完全撤退はしませんでした。
2か所だけ残したのです。
なぜか?
お客様の“生の声”を聞き続けるため。
作り手だけの世界に閉じこもると、「自分では最高!」と思っても、世間とはズレていくことがあります。
そこは、ずっと大事にしてきた部分でした。
そして不思議なことに――
催事を減らしたことで、逆に工房が元気になっていったのです。
今までは、私が出張続きで、
「新規の話が来ても対応できない」
なんてことも多かった。


でも工房にいる時間が増えたことで、
- 新しい作品開発
- 新規取引先対応
- 大口案件
- 弟子たちとの制作
全部に向き合えるようになりました。
しかも、催事にかかっていた莫大な経費も消えた。
ホテル代、交通費、送料、人件費…。
売上だけ見れば減っても、出費も同じくらい減るわけです。
結果として、経営はむしろ安定。
まさに、
「ピンチの後にチャンスあり」
でした。
コロナは大変でした。
でも、あの強制リセットが無ければ、私はずっと“出張する竹職人”のままだったかもしれません。
今はようやく、腰を据えて、じっくり竹と向き合える毎日です。
いよいよ、このシリーズも明日で終了です。 涙


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