〜「無ければ作る」が始まった話編〜
結婚した秋、人生で一番うれしかった出来事がありました。
そう、妻のお腹に新しい命がやってきたのです。
産婦人科の診察中、私は近くの本屋で時間つぶし。
「どうだったかなぁ…」と落ち着かず待っていると、妻が本屋に入ってきた瞬間――
両手を頭の上にあげて、でっかい“OKマーク”。
もう、あの瞬間は忘れられません。
本屋なのに、心の中では紙吹雪が舞っていました。
当時は、竹原での講師生活4年目。
独身時代は小さな家で十分でしたが、この年からは夫婦二人の新婚生活です。
そこで頼りになるのが、毎度おなじみ中坊さん。

「新婚が住める、いい家をお願いします!」
すると、本当に築浅の素敵な二階建てを見つけてきてくれたのです。
しかも、知り合い価格。ありがたや…。
とはいえ、暮らしは超・質素。
家賃、食費、光熱費、ガソリン代、電話代――
全部合わせても月10万円ほど。
なぜなら、それ以外のお金は全部ログハウス建築費に消えていくからです。
でも、不思議と「貧しい」と思ったことは一度もありませんでした。
ちなみに、その頃の私のお小遣い。
月3000円。
煙草も吸わない。喫茶店にも行かない。
唯一の贅沢は「囲碁講座」の本を買うことくらい。
むしろ余る。
そんなある日、職場の女性事務員さんに聞いてみました。
「旦那さんのお小遣いって、どれくらい?」
すると返ってきた答えが、
「うちは少ないんよ〜、1000円」
私は内心ガッツポーズ。
「勝った!うちより少ない家があった!」
…ところが。
よく聞くと、
“1日1000円”。
桁じゃなく、単位が違っていました。
完全敗北です。
さらにある日。
妻がホームセンターで電話機を買ってきました。
親機+コードレス子機付き。
当時としては最新型。
お値段、39,800円。
ところが数日後、妻がしくしく泣いている。
「どうした!?」
と聞くと、
「どうして、あんな無駄遣いをしてしまったんだろう…」
と、本気で落ち込んでいるのです。
その姿を見て、
“電話機ひとつで妻を泣かせてしまう自分の経済力…”
ちょっと切なくなりました。
そして春。
妻は出産準備のため別府の実家へ。
私はというと――
「子どもが生まれるのに、風呂が無いのはマズい!」
と、慌てて風呂づくり開始です。
もちろん、ただの風呂では終わりません。
せっかくなら“岩風呂”だ!
別府の霊園近くに石屋さんがあり、墓石を切り出した端材が山のように積んでありました。
通るたびに、
「この石、いい感じだな」
と拾って帰る。
そしてコツコツ壁に貼る。
完全に“セルフ岩風呂建設”。
温泉ではないけれど、給湯器のお湯をためれば立派なお風呂です。

この手作り岩風呂、なんと6年間活躍。
しかし最後は家族会議で敗北し、システムバスへ交代となりました。
岩風呂、引退。

トイレも慌てて据え付け!
振り返れば、あの頃は足りないものだらけでした。
お金も無い。
設備も無い。
便利さも無い。
でも――
「無ければ、自分で作ればいい」
そんな考え方が、あの頃から自然と身についていった気がします。
どうやら私は、竹細工だけではなく、
人生そのものも“手作り”していたようです。


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