ついに70歳。
「健康第一!」なんて言葉が、急に他人事ではなくなってきました。
というわけで、長らくご無沙汰していた健康診断へ行くことに。
血圧よし、身長ちょい縮み、視力は気合い――などと想像していたのですが、最大の難関はそこではなかった。
そう、“検便”である。
しかも二日分。
つまり、二回戦。
説明書にはこう書いてある。
「便器にトレールペーパーを敷き、速やかに採取してください」
なるほど。簡単そうだ。
しかし、ここで我が家の文明の利器が牙をむく。
そう、ウォシュレット式・自動洗浄トイレ。
まず初日。
慎重にトイレットペーパーを重ね、その上にトレールペーパーを設置。
まるで月面着陸の準備である。
そして投下成功。
「今だ!」
検便キットの、あの歯間ブラシみたいな棒で、便の表面をサッとなぞろうとした瞬間――
ウィーーーン……
出た。
自動洗浄。
「あっ!!」
叫びもむなしく、我が分身は渦の中へ旅立っていった。
気を取り直して第二ラウンド。
今度はトレールペーパーを失ったため、トイレットペーパーを何重にも重ねて迎撃態勢。
再び投下。
……したはずなのに。
なぜか便は、紙の横で優雅に漂っている。
さらに追い打ちをかけるように、
ウィーーーン……
また来た、自動洗浄。
このままでは二連敗。
背水の陣。
私はとっさに――
素手でつかんだ。
いや、誤解しないでいただきたい。
幸い、私の便はしっかり固形タイプ。
被害は最小限で済んだ。
とはいえ、70歳にして、まさか便と真剣勝負を繰り広げるとは思わなかった。
その後、無事に採取成功。
そして人生で一番丁寧に手を洗ったのは言うまでもない。



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