今年も、竹と若者と格闘する季節がやってきた
毎年9月になると、私の「後継者育成事業」が始まります。
名前だけ聞くと、なんだか国の重要プロジェクトのようですが、要するに若い人たちと一緒に、竹を割ったり、編んだり、悩んだりする8日間です。
今年は9月19日(土曜日) 本日から始まります。
舞台は別府。
別府には、全国で唯一の竹工芸の訓練校があります。
全国各地から、「竹工芸を学びたい」という、なかなか珍しい、そして頼もしい若者たちが集まってきます。
竹を割るところから始まり、2年間かけて竹工芸の技術、デザイン、そして経営まで学ぶ。
言葉にすると簡単ですが、実際には竹という相手がなかなか手強い。
こちらが「こうなってほしい」と思っても、竹には竹の都合があります。
人間の都合など、あまり聞いてくれません。
まっすぐしてほしい時に曲がり、曲がってほしい時には妙に頑固。
長年付き合っていても、いまだに「今日は機嫌が悪いな」と思うことがあります。
まあ、竹に機嫌があるのかどうかは別として、職人はそう思いたくなるものです。
そんな訓練校では、学校の授業だけでは学べない「現役の職人から直接技術を学ぶ講座」があります。


1年生で4講座、2年生でも4講座。
私が担当するのは2年生の講座です。
土曜日、日曜日を使って4週間。
合計8日間。
生徒たちにとっては勉強の8日間。
私にとっては……まあ、それなりに気合いの入る8日間です(笑)。
私の講座では、「網代編みの竹バッグ」を製作します。
8日間で一通りの工程を教えていくのですが、私が伝えたいのは技術だけではありません。
技術を教えるのは、全体の半分くらいでしょうか。
残りの半分、いや、それ以上に伝えたいのは、職人として仕事を続けていくための「ものの考え方」です。
なぜ、この仕事を長く続けてこられたのか。
どうすれば、長く続けることができるのか。
これからの時代、職人としてどう生き残っていくのか。
正直なところ、私もその答えをすべて知っているわけではありません。
もし知っていたら、今ごろ「職人成功の秘訣」という本でも出しているかもしれません。
残念ながら、そんな都合のいい答えはありません。
だからこそ、毎日考え、手を動かし、失敗しながら続けていくしかないのだと思います。
昔から職人の世界には、「門外不出」や「一子相伝」という言葉があります。
「この技は、簡単には教えんぞ」
そんな世界です。
確かに、少し格好いい。
「これは先祖代々伝わる秘伝の技で……」
なんて言えば、ちょっとした迫力もあります。
しかし、別府竹細工の世界は、比較的開かれています。
基本的な技術は、次の世代へオープンにしていく。
技術を一人で抱え込むより、多くの人が身につけることで、業界全体の力を高めていく。
そして、その先にまた新しい技術や作品が生まれてくる。
私は、それでいいと思っています。
技術は、しまい込んでおくためのものではありません。
使って、磨いて、誰かに伝えて、さらにその人が新しいものを生み出していく。
そうやって技術は生き残っていくのだと思います。
そして面白いのは、こちらが「教える側」だと思っていても、毎年、若い人たちからたくさんのものをもらうことです。
若い感性。
新しい考え方。
そして、こちらが思いもつかなかった発想。
「そんな考え方をするのか」
と感心することもあれば、
「いやいや、それはちょっと竹に聞いてみようか」
と言いたくなることもあります(笑)。
それでも、そうしたやり取りが面白い。
長く仕事をしていると、自分では気づかないうちに「こういうものだ」と決めつけてしまうことがあります。
そんな時、若い人たちの素直な疑問や発想が、自分の頭を少し揺らしてくれます。
今年は、訓練校の生徒6名。
そして竹組合の若手2名。
合計8名です。
8人の若者と、竹と、そして私。
さて、今年はどんな8日間になるのでしょう。
予定どおり順調に進むのか。
それとも、竹のご機嫌に振り回されるのか。
おそらく、その両方でしょう。
うまく編める日もあれば、なかなか思うようにいかない日もある。
手が動かず、頭を抱えることもあるでしょう。
でも、職人の仕事というのは、そういうものです。
思うようにいかないから考える。
考えるから工夫する。
工夫するから、少しずつ自分のものになっていく。
近道はありません。
……と言いながら、もし近道があるなら、私も少し教えてほしいところですが(笑)。
今年も、竹を割り、編み、悩み、笑いながら、8日間を過ごすことになりそうです。
そして8日間を終えた時、立派なバッグができていることはもちろんですが、それ以上に、
「竹の仕事って、なかなか大変だけど、悪くないな」
「もう少し続けてみようかな」
そんな気持ちが、それぞれの中に残ってくれたらと思っています。
さてさて、今年はどんな作品が生まれ、どんな珍事件……いや、成長が待っているのか。
今年も、竹と若者たちに負けないように、私自身も楽しみながら頑張ろうと思います。


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