後継者育成事業 2026-1

後継者育成事業

今年も、竹と若者と格闘する季節がやってきた

毎年9月になると、私の「後継者育成事業」が始まります。

名前だけ聞くと、なんだか国の重要プロジェクトのようですが、要するに若い人たちと一緒に、竹を割ったり、編んだり、悩んだりする8日間です。

今年は9月19日(土曜日)  本日から始まります。

舞台は別府。

別府には、全国で唯一の竹工芸の訓練校があります。

全国各地から、「竹工芸を学びたい」という、なかなか珍しい、そして頼もしい若者たちが集まってきます。

竹を割るところから始まり、2年間かけて竹工芸の技術、デザイン、そして経営まで学ぶ。

言葉にすると簡単ですが、実際には竹という相手がなかなか手強い。

こちらが「こうなってほしい」と思っても、竹には竹の都合があります。

人間の都合など、あまり聞いてくれません。

まっすぐしてほしい時に曲がり、曲がってほしい時には妙に頑固。

長年付き合っていても、いまだに「今日は機嫌が悪いな」と思うことがあります。

まあ、竹に機嫌があるのかどうかは別として、職人はそう思いたくなるものです。

そんな訓練校では、学校の授業だけでは学べない「現役の職人から直接技術を学ぶ講座」があります。

1年生で4講座、2年生でも4講座。

私が担当するのは2年生の講座です。

土曜日、日曜日を使って4週間。

合計8日間。

生徒たちにとっては勉強の8日間。

私にとっては……まあ、それなりに気合いの入る8日間です(笑)。

私の講座では、「網代編みの竹バッグ」を製作します。

8日間で一通りの工程を教えていくのですが、私が伝えたいのは技術だけではありません。

技術を教えるのは、全体の半分くらいでしょうか。

残りの半分、いや、それ以上に伝えたいのは、職人として仕事を続けていくための「ものの考え方」です。

なぜ、この仕事を長く続けてこられたのか。

どうすれば、長く続けることができるのか。

これからの時代、職人としてどう生き残っていくのか。

正直なところ、私もその答えをすべて知っているわけではありません。

もし知っていたら、今ごろ「職人成功の秘訣」という本でも出しているかもしれません。

残念ながら、そんな都合のいい答えはありません。

だからこそ、毎日考え、手を動かし、失敗しながら続けていくしかないのだと思います。

昔から職人の世界には、「門外不出」や「一子相伝」という言葉があります。

「この技は、簡単には教えんぞ」

そんな世界です。

確かに、少し格好いい。

「これは先祖代々伝わる秘伝の技で……」

なんて言えば、ちょっとした迫力もあります。

しかし、別府竹細工の世界は、比較的開かれています。

基本的な技術は、次の世代へオープンにしていく。

技術を一人で抱え込むより、多くの人が身につけることで、業界全体の力を高めていく。

そして、その先にまた新しい技術や作品が生まれてくる。

私は、それでいいと思っています。

技術は、しまい込んでおくためのものではありません。

使って、磨いて、誰かに伝えて、さらにその人が新しいものを生み出していく。

そうやって技術は生き残っていくのだと思います。

そして面白いのは、こちらが「教える側」だと思っていても、毎年、若い人たちからたくさんのものをもらうことです。

若い感性。

新しい考え方。

そして、こちらが思いもつかなかった発想。

「そんな考え方をするのか」

と感心することもあれば、

「いやいや、それはちょっと竹に聞いてみようか」

と言いたくなることもあります(笑)。

それでも、そうしたやり取りが面白い。

長く仕事をしていると、自分では気づかないうちに「こういうものだ」と決めつけてしまうことがあります。

そんな時、若い人たちの素直な疑問や発想が、自分の頭を少し揺らしてくれます。

今年は、訓練校の生徒6名。

そして竹組合の若手2名。

合計8名です。

8人の若者と、竹と、そして私。

さて、今年はどんな8日間になるのでしょう。

予定どおり順調に進むのか。

それとも、竹のご機嫌に振り回されるのか。

おそらく、その両方でしょう。

うまく編める日もあれば、なかなか思うようにいかない日もある。

手が動かず、頭を抱えることもあるでしょう。

でも、職人の仕事というのは、そういうものです。

思うようにいかないから考える。

考えるから工夫する。

工夫するから、少しずつ自分のものになっていく。

近道はありません。

……と言いながら、もし近道があるなら、私も少し教えてほしいところですが(笑)。

今年も、竹を割り、編み、悩み、笑いながら、8日間を過ごすことになりそうです。

そして8日間を終えた時、立派なバッグができていることはもちろんですが、それ以上に、

「竹の仕事って、なかなか大変だけど、悪くないな」

「もう少し続けてみようかな」

そんな気持ちが、それぞれの中に残ってくれたらと思っています。

さてさて、今年はどんな作品が生まれ、どんな珍事件……いや、成長が待っているのか。

今年も、竹と若者たちに負けないように、私自身も楽しみながら頑張ろうと思います。

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