〜弟子づくりと“2割増し経営”編〜
〜弟子づくりと“2割増し経営”編〜
前回、海外青年協力隊へ行く前の訓練として、生徒を預かることになった話を書きました。
ところが、その時――
「同級生も一緒に働かせてもらえませんか?」
と、もう一人やって来たのです。
しかも、その面接の日がまた忘れられない。
その彼女、私の家へ向かって一生懸命走って来ている。
一方その頃の私はというと――
「次男坊が生まれそうだ!!」
と、慌てて産婆さんのところへ向かう途中。
山道の途中で、まさかのすれ違い。
車を止め、
「ごめん!今ちょっとそれどころじゃない!」
という、人生感あふれる面接延期になったのでした。
こうして弟子が二人に増えました。
ところが翌年になると、
「弟子にしてください!」
という希望者がまた現れる。
当時はちょうどバブル崩壊後。
景気は停滞し、竹細工業界も就職口が減っていました。
だからこそ、
「技術を身につけたい」
「職人として生きたい」
という若者たちが、私の工房にやって来るようになったのです。

しかし、弟子を取るということは、
“食べさせる責任”も増えるということ。
弟子が増えたからといって、勝手に仕事が増えるわけではありません。
なので私は――
“今のキャパより2割増し”
くらいの仕事を引き受けるようになりました。
すると当然、工房はフル操業。
毎日、竹を割って、編んで、仕上げて、出荷して。
まさに竹まみれの日々です。
その頃は、まだ花籠の需要が大きく、
毎月何百個という単位で出荷していました。
当時の竹業界の流れはこんな感じ。
職人が籠を作る
↓
産地問屋が箱や落としを付ける
↓
消費問屋へ
↓
百貨店や小売店へ
↓
お客様の手元へ
つまり職人は、
「作ることだけ」
に集中できた時代だったのです。
でも、私は前から少し不思議に思っていました。
多くの職人さんが、
“自分の作品が最終的にいくらで売られているか”
を知らずに作っていたのです。
「この作品、何時間かかったから〇〇円」
そんな“日当計算”が基本でした。
もちろん、それも大事。
でも私は、
「最終的に店頭でいくらになるのか?」
を逆算して考えたかった。
例えば、
「お店で1万円で売る作品」
を作るとします。
その時、
この流通なら、自分はいくらで作るべきか?
さらに、
“1万円で売るなら、1万2千円の価値に見えるものを作ろう”
と考えたのです。
面白いもので、
1万円と1万1千円の商品を並べても、人の好みは割れます。
でも、
1万円と“1万2千円に見えるもの”
を並べると、かなりの人が後者を選ぶ。
この“ちょっと得した感じ”が大事なんですね。
私はこれを勝手に、
「2割増し経営」
と呼んでいました。
作品だけじゃありません。
仕事量も。
工夫も。
サービスも。
人付き合いも。
“ちょっと期待を超える”。
それを積み重ねることが、
弟子たちを食べさせ、自分も生き残る道だったのだと思います。


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