地域の区長になって、今年で2年目。
「区長さんって、何をするんですか?」
と聞かれることがある。
私も区長になる前は、せいぜい会議に出たり、回覧板を回したりするくらいだろうと思っていた。
ところが、どっこい。
区長の仕事、なかなかどうして多岐にわたる。
災害工事の申請に始まり、地区の運動会、高齢者へのお弁当配達、消防訓練、公民館の清掃……。
まあ、いろいろあります。
そして、その中でも地域を挙げての一大イベントが、
「夏の道草刈り」
である。
名前だけ聞けば、なんとも牧歌的な響きである。
しかし、実際はそんなに甘くない。
夏になると、道端の草は「今年も元気に育ちました!」と言わんばかりに、グングン伸びる。
木の枝も、「ここは俺の縄張りだ」とばかりに道路側へ張り出してくる。
そのまま放っておくと、道幅はどんどん狭くなる。
そこで、地区の各家庭から一人ずつ出てもらい、みんなで草を刈り、木の枝を切り、道路をきれいにするのである。

都会の自治会なら、受け持つ範囲もそれほど広くないのかもしれない。
しかし、そこは田舎。
「広い!」
とにかく広い。
国道500号線から地区の外れまで、なんと約7キロ。
この7キロの道沿いを、みんなで草刈りしていくのである。
もはや「草刈り」というより、ちょっとした草との戦争である。
区長は「草刈り隊長」なのか?
区長の仕事は、まず日程を決める。
そして各家庭に告知。
さらに当日の天気を見ながら、
「やるのか?」
「やらないのか?」
を判断する。
雨が降りすぎても困る。
暑すぎても困る。
台風が来ても困る。
そして、決行となれば、萱籠地区にある4つの集落、それぞれの子組合長さんに受け持ち範囲を伝える。
今回は、街づくり協議会から21名もの応援が入ってくれた。
地区から18名。
合わせて、
総勢39名!
これはかなりの大部隊である。
「今年は楽勝かもしれない」
そんな淡い期待を抱きながら、当日を迎えた。
朝8時集合……のはずが
集合時間は朝8時。
ところが、田舎の「8時集合」は、都会の「8時集合」と少し意味が違う。
だいたい20~30分くらい早く集まってくる。
つまり、8時に集合と言われたら、
「7時30分くらいには行っとくか」
となる。
というわけで、区長である私は7時半には集合場所へ。
皆さんを待ち受ける。
すると案の定、村人たちは次々とやってくる。
7時45分には、ほぼ全員集合。
「さすが我が地区、時間に正確だ!」
と、区長としてちょっと鼻が高くなった、その時である。
ふと気がついた。
街づくり協議会の皆さんが、一人もいない。
……ん?
21人ですよ。
21人。
一人くらい遅れるなら分かる。
しかし、21人全員いない。
これは、どういうことだ?
8時になっても来ない。
「日にち、間違えた?」
「まさか集合時間を間違えた?」
「いやいや、まさか……」
だんだん不安になってくる。
電話をしてみる。
……出ない。
もう一度電話。
……出ない。
区長の心拍数だけが、草刈り前から上昇していく。
そして8時10分。
さすがに待っているわけにもいかない。
村人の皆さんには、それぞれの持ち場へ行って作業を始めてもらうことにした。
すると、そのころになって、ようやく電話がつながった。
どうやら……
集合場所を間違えていたらしい。
「ああ、そういうことね……」
ホッとしたような、力が抜けたような。
まあ、これも事前にしっかり確認しておかなかった私の責任である。
区長2年目。
まだまだ修行が足りません。
まさかの「草刈り日和」
ところが、この日の天気が実に良かった。
いや、「良かった」という表現が正しいのかどうかは分からない。
台風の影響もあって風が吹き、ときどきほんの少し小雨が降る。
8月の草刈りとしては、これ以上ないほどのコンディションだった。
これがもし、真夏の炎天下だったら……。
午前中の草刈りだけで、何人か倒れていたかもしれない。
いや、
2~3人くらいは「もうダメだ!」と草むらに寝転がっていたかもしれない。
(笑)
そう考えると、台風さんに少し感謝である。
やっぱり最後は「人海戦術」
最初はどうなることかと思った草刈りだったが、総勢39名の力はやはり大きい。
草を刈る人。
木の枝を切る人。
刈った草や枝を片付ける人。
それぞれが黙々と作業を進めていく。
そして、なんと!
予定していた時間より1時間も早く終了。
やっぱり、人間の力はすごい。
一人で7キロの道を草刈りしろと言われたら、たぶん途中で人生について考え始める。
しかし、39人集まれば、あっという間である。
まさに、
「人海戦術、恐るべし!」
である。

これからの地域に必要なもの
今回の草刈りをやっていて、改めて感じたことがある。
これからますます高齢化が進んでいく。
これは私の地区だけの話ではない。
どこの地区でも、今まで当たり前に地域の人たちだけでやってきたことが、だんだん難しくなってくるだろう。
「今まで自分たちだけでやってきたんだから、これからも自分たちでやらなければ」
という考え方だけでは、地域そのものがもたなくなってくる。
今回のように、街づくり協議会から応援に来てもらう。
困ったときには、お互いに助け合う。
そういう関係を少しずつ作っていくことが、これからの地域には必要なのだと思う。
そして、区長の仕事というのは、結局のところ、
「人と人をつなぐこと」
なのかもしれない。
草を刈るのはみんな。
道を守るのもみんな。
地域を守るのも、やっぱりみんな。
区長はその間を走り回って、
「○日にやりますよ!」
「天気、大丈夫かな?」
「集合場所、ここですよ!」
「……あれ?21人どこ行った?」
と、右往左往する係。
それでも、最後にみんなで汗をかいて、予定より早く作業を終え、
「いやあ、今年も終わったな!」
と笑える。
それが地域の良さなのかもしれない。
区長2年目。
まだまだ仕事は山ほどある。
次は何が待っているのやら……。
まあ、なるようになるでしょう。
ただし、次回からは集合場所の確認だけは、念入りにしておこう。
区長の仕事は、コミュニケーション作りに限りますな。


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