― いよいよ網代編み、そして「詰まらん奴」問題 ―
先週は、網代編みバッグに使う竹ヒゴ取りを、みっちりと指導してきました。
そして三日目の今日から、いよいよ本番の「網代編み」に入っていきます。
……とは言っても、いきなり本番のバッグを編ませるほど、私は鬼ではありません(笑)。
まずは練習です。
本番のバッグに取り掛かる前に、練習用の小さな篭を編んでもらいます。
この練習用の篭、実はサイズを決めていません。
「自分の作りたい大きさのものを作ってください」
という方式です。
そうなると当然、一人ひとり作りたい大きさが違ってきます。
ここからが、ちょっと頭を使うところです。
まずは図面から
それぞれが作ろうとするバッグの大きさを想定して、実寸大の底編みの図面を引きます。
そして、その図面を実際に測りながら、
「ヒゴを何本使うのか」
「どこで編み方を崩すのか」
「どの位置から立ち上げるのか」
などを割り出していきます。
私にとっては、いつもやっていることなので当たり前。
ところが、生徒たちはというと……
「…………?」
首を傾げています。
また、
「???」
首を傾げています(笑)。
どうやら、頭の中でなかなか図面と実物がつながらないようです。
でも、ここはとても大切なところ。
実際に独立して仕事を始めれば、お客様から、
「もう少し大きくしてほしい」
「このくらいの幅で」
「こういう形にできますか?」
など、いろいろな注文を受けることになります。
その時に、図面から必要な材料やヒゴの本数、編み方を割り出せなければ、正確な見積もりも出せません。
「まあ、だいたいこのくらいでしょう」
では、商売になりませんからね(笑)。
職人になるということは、手を動かすだけではなく、頭も使わなければならない。
竹細工、なかなか手強いです。

網代編みは「詰めてナンボ」
図面が出来上がったら、いよいよ編み始めます。
網代編みは、竹ヒゴを隙間なく詰めて編んでいくので、他の麻の葉編みや八つ目編み、亀甲編みなどに比べると、比較的分かりやすい編み方です。
ただし、網代編みで大事なのは、
「編むこと」より「詰めること」。
これが重要です。
少しでも隙間ができれば、仕上がった篭が何となくだらしなく見えてしまいます。
そこで、指先、特に爪を使って、ひと目ひと目をしっかり詰めていきます。
この「詰める」という作業。
九州弁には、こんな表現があります。
「詰まらん奴やの~~~」
つまり、隙間だらけで間が抜けている奴。
物事を最後まできちんと詰め切れない奴。
まさに網代編みで、目がスカスカになっている状態です(笑)。
竹細工をしながら、人生の教訓まで勉強できる。
なかなか奥深い講座です。
午前中には終わる……はずだった
予定では、午前中に練習用の篭を仕上げ、さらに本番のバッグの底編みまで終わらせて、午後からは「立ち上げ」の作業に入るつもりでした。
ところが……
思ったようには進みません。
やはり、最初からスイスイとはいきませんな。
予定よりかなり遅れて、ようやく立ち上げの作業に入ることになりました。
まあ、これも練習です。
予定通りにいかないのも、後継者育成事業の予定のうち……ということにしておきましょう(笑)。
平らなものを、どうやって立ち上げる?
ところで、平らに編んだ竹の生地を、どうやって四角い篭に立ち上げていくのか。
ここも、初めて見る人には不思議かもしれません。
角の部分を組み合わせながら、平面だった編み生地を徐々に起こしていきます。
そのためには、真っすぐな竹ヒゴを曲げなければなりません。
そこで登場するのが、電気コテ。
底の部分に電気コテを当てて、竹ヒゴに熱を加えます。
ある程度温まると、竹ヒゴが柔らかくなってきます。
そこを手加減で少しずつ曲げて、角を起こしていく。
最後に霧吹きで少し冷ましてやると、曲がった状態で竹が落ち着きます。
口で説明すると、簡単そうに聞こえます。
「温めて、曲げて、冷ます」
たったこれだけ。
……ところが、やってみると、そう簡単ではありません(笑)。

熱すぎてもダメ、温まってなくてもダメ
経験の浅い生徒たちには、
「どのくらい温まればいいのか?」
「どのくらいの力で曲げればいいのか?」
この感覚が、まだ分かりません。
実際に私がやって見せます。
「このくらいですよ」
と説明するのですが、いざ自分でやってみると……
熱を上げすぎて、
「あっ!」
竹ヒゴを焦がしてしまったり。
今度は慎重になりすぎて、
「まだかな?」
と思っているうちに、温まる前に曲げようとしてしまい、
「バキッ!」
と、竹ヒゴを折ってしまったり。
熱すぎてもダメ。
温まっていなくてもダメ。
竹は、なかなか気難しい相手です(笑)。
失敗するなら、今のうち
今回、練習用の篭を作っているのが、ここで大きな意味を持ってきます。
失敗しても大丈夫。
練習篭が、みんなの失敗を受け止めてくれます。
焦がしてしまっても、

折ってしまっても、
曲げ過ぎてしまっても、
「まあ、練習だから!」
で済ませられる(笑)。
そして、練習篭で失敗した経験が、本番のバッグで生きてきます。
「さっきは熱を上げすぎた」
「今度はもう少し待とう」
「力を入れ過ぎないようにしよう」
そうやって、一つずつ身体で覚えていく。
結局、技術というものは、失敗しながら身につけていくものなのだと思います。
練習篭には、完成した美しさだけではなく、こうした失敗の跡もいっぱい詰まっています。
それもまた、後継者育成の大事な一部分なのかもしれません。
さて、三日目も何とか終了。
予定よりは少々遅れましたが、ちゃんと前には進んでおります。
さてさて、明日はどうなりますことやら。
順調に進むのか。
また何かが焦げるのか。
それとも、誰かの竹ヒゴが「バキッ!」といくのか。
……できれば、明日は何も折れませんように(笑)。
また明日も、楽しくやっていきたいと思います。


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