竹の作業に集中していると、事務員さんから声が掛かる。
「高江さん、またプリンターの調子がおかしいんですよ。見てもらえますか?」
またか……。
私の工房では主にA4サイズのレーザープリンターを使っている。印刷スピードが圧倒的に速く、仕事には欠かせない存在だ。
ところが、このプリンターというやつ、本体はそれほど高くないのに、トナーがとんでもなく高い。
純正トナーを4色そろえると、あっという間に10万円近くになる。
「トナーに10万円?」
そう思った私は、当然のようにリサイクルトナーへ走った。
こちらなら4色セットで1万円ちょっと。
なんと約10分の1である。
これはもう、飛びつかない理由がない。
・・・と思っていた。
ところが世の中そんなに甘くない。
リサイクルトナーを使うと、色むらが出る。
にじむ。
時には「誰かプリンターの中でインク爆弾を爆発させたのか?」と思うほど、トナーが散乱する。
そして、そのたびに悩む。
「本体を買い替えるべきか・・・」
「純正トナーに戻るべきか・・・」
「いや、まだ戦えるはずだ・・・」
そんな葛藤を繰り返した結果、気が付けば事務所にはプリンターが増殖していた。
故障時の予備レーザープリンター。
トナー代節約用のインクジェットプリンター。
FAX専用プリンター。
気が付けば、なんと合計5台。
小さな印刷工場ができそうな勢いである。
それでもトラブルはなくならない。
リサイクルトナーとの戦いは、まるで終わりの見えない消耗戦だった。
そこで私は、ついに決断した。
レーザープリンターのレンタル導入である。

月々の費用はかかる。
しかし、トナー交換もメンテナンスもすべてお任せ。
「壊れたらどうしよう・・・」
という精神的ストレスから解放される。
導入から一週間ほど経った頃、宅急便ラベルの印刷がうまくいかないという問題が発生した。
以前なら、
「さて、何が悪いんだ?」
「設定か?」
「トナーか?」
「本体か?」
と頭を抱えるところだ。
ところが今回は違う。
保守サービスへ電話すると、すぐ担当者が来て対応してくれた。
なんという安心感。
まるでプリンターの主治医がいるようなものである。
さらにFAX回線も統合できたため、FAX専用プリンターも引退。

事務所はずいぶんスッキリした。
もちろんレンタル料はかかる。
しかし今では、プリンターが少し変な動きをしても慌てなくなった。
何より大きいのは、
「どうしよう・・・」と悩む時間がなくなったこと。
考えてみれば、私の仕事は竹細工であって、プリンター修理ではない。
もっと早く気付けばよかったのかもしれない。
こうして長年続いた「プリンターとの終わらない戦い」は、ようやく休戦協定が結ばれたのである。


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