背伸びして行った「一番館」

思い出

昨日は、私の青春を育ててくれた「三番館」のお話を書きました。

でも、たまには奮発して「一番館」に行くこともありました。

最初に連れて行ってもらったのは、母と観たディズニー映画**『101匹わんちゃん大行進』**。

総天然色の大画面に映し出される、あの愛らしい子犬たち。

そして、子ども心に「なんて怖い人なんだ!」と震え上がったクルエラ。

今でも鮮明に覚えています。

映画の帰りにはパンフレットを買ってもらい、家へ帰ると夢中になって子犬たちの絵を描いていました。

あの頃は、映画を観るだけでは終わらず、家へ帰ってからも映画の続きを楽しんでいたんですね。

そして、もう一つ忘れられない思い出があります。

人生で初めて、一人でロードショーを観に行った日です。

小学4年生、お正月。

お年玉で財布だけは、ちょっとした大富豪です。

「よし、今日は一番館へ行こう!」

そう決心しました。

向かった先は、名古屋・栄の白川公園近くにあった中日シネラマ

もう建物からして違います。

三番館が町の食堂なら、中日シネラマは高級レストラン。

子どもの私は入口に立っただけで緊張していました。

さらに驚いたのが料金です。

普段通っていた三番館は小学生50円。

ところがロードショーは…

800円!

今なら「映画だからそんなものか」と思えますが、当時の私には天文学的な金額です。

「本当にここへ座っていいのかな…」

指定席のチケットを握りしめながら、何度も確認したのを覚えています。

観た映画は**『グレートレース』**。

トニー・カーティス、ジャック・レモン、ナタリー・ウッドらが出演する、世界一周の自動車レースを描いた大作コメディです。

上映時間は2時間40分。

しかも途中で休憩までありました。

子どもだった私は、

「映画って途中で休むものなの?」

と、それにも驚きました。

正直なところ…

映画の細かい内容は、あまり覚えていません(笑)。

でも、一人で繁華街へ出掛けたこと。

初めて指定席に座ったこと。

大スクリーンと体に響く音響。

そして、「今日はちょっと大人になった気がする」という、あの胸の高鳴りだけは、60年以上経った今でも忘れません。

人は歳を重ねると、「もったいないから」「今度でいいか」と、つい安全運転になってしまいます。

でも、たまには少しだけ背伸びをしてみる。

そんな経験は、案外、一生の思い出になるものです。

あの日、勇気を出して800円の指定席を買った小学4年生の私は、きっと今の私より少しだけ冒険家だったのかもしれません。

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