― 20分の仕事が、なぜか一日仕事になる ―
後継者育成事業、五日目です。
先週までで、網代編みの「立ち上げ」までを教えました。
そして宿題は、
「次回までに、すべての篭を上まで編み上げてくること!」
です。
ここから少しずつ、アクセルを踏み込んでいきます。
これまでは竹ヒゴを編むことが中心でしたが、今回はいよいよ、この課題の最大の山場。
「火曲げ」
の習得です。
名前からして、ちょっと怖そうです(笑)。
熱を使って、竹を曲げる
今回曲げるのは、篭の「縁材」。
まずは、自分で編み上げた篭を実際に測ります。
そして、
「ここから曲げる」
「ここまで曲げる」
という位置を縁材に墨で印を付けていきます。
曲げる場所が決まったら、いよいよ火曲げ。
工業用の高温になるドライヤーを使って、竹に熱を加えながら曲げていきます。
……と書けば簡単そうです。
「熱を加えて、曲げる。」
たったこれだけ。
ところが、ここにも職人技が潜んでいます。
熱すぎてもダメ、曲げ過ぎてもダメ
竹を曲げる時に大切なのが、
「どのくらい温まっているか」
そして、
「どのくらいの力で曲げるか」
です。
温まり方が足りなければ、竹は言うことを聞いてくれません。
かといって、熱を入れ過ぎれば……
そうです。
焦げます。
そして、力加減を間違えると、
竹が凸凹になったり、
思ったところとは違う場所が曲がったり。
なかなか素直には言うことを聞いてくれません。
竹も、
「はい、分かりました。ここを曲げればいいんですね」
なんて、都合よくは動いてくれませんからね(笑)。

まずは練習、失敗は練習材に任せる

そこで、今回はあらかじめ「火曲げ練習用」の縁材を用意しておきました。
最初から本番用の縁材を使わせるような、無茶はしません。
まずは練習用の竹で、
「これくらい温める」
「これくらいの力で曲げる」
という感覚を身体で覚えてもらいます。
上手く曲げられるようになったと思った人から、本番用の縁材へ。
とはいえ……
最初はやっぱり、
凸凹。
そして、
焦げる。
まあ、そうなりますよね(笑)。
これも経験です。
失敗したからこそ、
「今のは熱過ぎた」
「もう少し待ってから曲げればよかった」
ということが分かります。
本番の縁材、無事に曲がりました!
何度か練習して、ようやく「これならいけそうだ」というところまで来たところで、本番の縁材に挑戦します。
慎重に熱を入れて……
少しずつ曲げる。
「もう少し……」
「ここかな?」
「いや、もうちょっと……」
と、みんな真剣そのもの。
そして、無事に曲げ終わったら、篭本体に針金で仮止めしていきます。
これで、縁の形がだんだん見えてきます。
プロなら20~30分。生徒たちは一日。
さて。
ここまでの作業。
文章で読むと、そんなに大変そうには見えないかもしれません。
ところが……
一日掛かりました(笑)。
私たちプロがやれば、20~30分ほどで終わる作業です。
それが、今回は朝から一日仕事。
でも、これは仕方がありません。
初めてやるのですから。
私だって、初めて竹を曲げた時から20~30分で出来ていたわけではありません。
何度も失敗して、
焦がして、
曲げ過ぎて、
曲げ足りなくて、
「ああでもない、こうでもない」
とやりながら、少しずつ身体が覚えていったものです。
職人の「20分」というのは、20分で覚えた技術ではありません。
その20分の裏側には、何年、何十年という経験が詰まっています。
そう考えると、
一日掛かった生徒たちも、今日は立派に一歩前進です。
さて、次はどんな作業が待っているのか。
少しずつ完成形が見えてきました。
ここから先は、ただ編むだけではありません。
形を整え、仕上げていく工程へと入っていきます。
まだまだ先はありますが、みんな頑張っています。
それにしても……
プロなら30分の仕事を、一日かけて覚える。
これが「後継者育成」というものなんでしょうね。
まあ、先生としては、
「明日はもう少し早く終わってくれんかなぁ……」
と、ちょっとだけ思っております(笑)。


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